婦人科について
更年期診療について
女性は30代後半から女性ホルモン(エストロゲン)の量が徐々に減少していきます。そして50歳前後になると多くの方が閉経を迎えるようになります。この閉経前後の年代とされる、45~55歳頃までの約10年間を更年期と呼びます。
更年期障害とは
更年期にさしかかると、女性ホルモンの分泌量が急激に減少していきますので、体がその変化に対応し切れず、様々な不調を招くようになります。この不調症状は個人差が大きく、その程度が非常に強い方から全く感じないほど弱い方まで様々です。なかでも日常生活に支障を来すほどの症状が現れたという場合は、更年期障害と診断されます。
主な症状
自律神経が失調した症状
- ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)・異常発汗・頭痛・動悸・めまいなど
心の症状
- 情緒不安定・イライラ・涙もろくなる・抑うつ気分・漠然とした不安感・意欲低下など
その他の症状
- 腰痛・関節痛・食欲不振・皮膚乾燥感・性交障害・外陰部違和感・排尿障害など
自律神経とは?
自分の意思や意識で働かせることのできない神経のこと自律神経と呼びます。血圧、心拍、発汗、体温調節など、生命を維持する上で重要な働きをしています。
自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、イメージ的には、交感神経は興奮時、副交感神経は安静時に主に働いていて、普段はこの2つの神経で体のバランスを整えています。このバランスが崩れて自律神経失調となる原因としては、以下のようなものがあります。
- 生活の乱れ:夜更かしや不規則な生活など、人体のリズムを無視した生活
- 過度なストレス:仕事、人間関係、環境の変化など、過剰なストレスが引き金になります。
- ストレスに弱い性格:Noと言えない、他人の評価を気にしすぎる、依存心が強いなど、ストレスへの抵抗力が弱い性格
- 女性ホルモン:女性ホルモンであるエストロゲンは自律神経に作用しているため、閉経期に急激に減少することで失調症状が出ます。
検査
更年期障害では、上記のような多種多様な不調が心身に現れます。そのため似たような症状の病気というのもついつい見過ごしがちになります。つまり、更年期障害の症状と思っていたら、別の病気に罹っていたということも考えられます。症状の原因をはっきりさせるためにも速やかに来院し、血液を中心とした検査を受けることが大切になります。少しでも体調が悪いと感じたら、お早めにご相談ください。
検査の結果、他に病気がなかった場合、更年期障害と診断します。
治療
更年期障害の治療では、低下したホルモンを補充する「ホルモン補充療法(HRT)」、漢方薬の処方、プラセンタ注射、サプリメント(エクエル)の摂取の提案をしております。
また、更年期障害を招いているとされる生活習慣を改善するアドバイスなどを行います。
性病・性行為感染症(STI)
カンジダ症
カンジダ菌(真菌、カビ菌)の増殖が原因となる外陰膣炎で、外来で頻繁に見かける感染症です。カンジダ菌は特殊な菌ではなく、健康な人の身体(皮膚、口腔、腸、膣など)に常在している菌です。
症状が無ければ治療の必要はありませんが、菌が増殖して炎症がおきると帯下(おりもの)の異常や外陰部の痒みなどの症状が出てくるので治療の対象となります。
帯下は、特徴的でヨーグルト状、酒粕状、カッテージチーズ状などと表現され、ボソボソ、ドロッとした様子です。外陰部は痒みの症状が多く、時に激しい痒みを伴い、発赤、腫れ感、熱感なども多い訴えです。
原因
- 膣内にはもともと常在菌による自浄作用(自分をきれいに保つ作用)がありますが、このバランスが崩れるとカンジダを発症しやすくなります。
例)抗生剤の内服、疲労・寝不足・ストレス・持病による免疫力の低下、妊娠中、陰部の洗いすぎなど。 - 高温多湿の蒸れた状態。締め付けの強い衣服など。
- いわゆる性病ではありませんが、性交渉でうつることがあります。
- 原因がはっきりしないことも多く認められます。
検査
- 顕微鏡でカンジダ菌糸を確認する。
- 培養検査でカンジダを確認する。
治療
- 一回の治療の期間は概ね一週間で、主に外用薬(膣内に挿入する膣錠、外陰部に塗るクリーム)を使用します。妊娠中でも使用に問題ありません。
- 内服薬もありますが、こちらは妊娠中・妊娠の可能性がある時は内服出来ませんので、内服できる時が限られています。
- 治療中は性交を控え、入浴後のタオル共有はしないでください。
※パートナーは、無症状でしたら治療の必要はありません。症状があれば外用薬の塗布などの治療の適応となります。
予防
- 治療は途中で止めずにきちんと終了まで治療しましょう。
- 下着やおりものシートをこまめに取り替えてください。
- 蒸れを防ぐ目的で、通気性の良い下着を選んでください。
- 乳酸菌サプリを服用することで、膣炎再発の予防となります。
※予防はなかなか難しく再発も多いので、症状があったら早めにご相談ください。抗真菌薬の入ったソープを使用するのも良いかと思います。
その他ご不明な点はお気軽にご質問ください。
クラミジア感染症
クラミジア感染症は、性行為によるクラミジア感染が原因で発症する性行為感染症です。無症状のことも多いです。
子宮頚管(子宮の入り口近く)への感染に始まり、感染が進むと子宮内膜が卵巣卵管に炎症がおこります。帯下(おりもの)の色、量、臭いなどの異常、性交時の出血、腹痛などの症状が出ますが、放置されるとお腹の中まで炎症が広がってしまい、激しい痛みを伴うこともあります。不妊症や子宮外妊娠の原因ともなり得る感染症なので、しっかりと治療が必要です。子宮外妊娠の原因となり得る疾患のため、妊娠検査薬で陽性が出たら、その後1週間くらいのところで子宮内に妊娠しているか確認するために受診して診察を受けて下さい。
診断
膣鏡で膣内を診察し、子宮頚管を専用スワブ(綿棒のようなもの)でこすって、クラミジアの有無を調べたり、血液でクラミジア抗体を調べたりすることで診断します。
1回感染すると、血液に抗体が認められるため再感染は子宮頸部の検査で行います。Oral sexによる咽頭感染のリスクがある場合には咽頭うがい液を採取して検査を行うことがありますが、当院での検査は自費です。症状があるようなら耳鼻科への受診をおすすめします。
治療
パートナーと一緒に治療することが大切です。パートナーには泌尿器科を受診してもらいましょう。
抗菌薬4錠を1回、空腹時に内服することでほぼ確実に治療が出来ます。内服することで1週間効果が持続します。他科への受診の際には内服したことをお伝え下さい。
副作用として下痢の症状がみられることがあります。整腸剤を内服いただいてかまいませんし、受診して相談も可能です。
症状が強い場合には医師の指示で抗菌薬の点滴が必要になることもあります。
治療後は3週以上経過してから再検査を行いますので、ご自身とパートナーの陰性を確認するまでは性交渉は控えて下さい。再検査で陽性の場合には再度治療が必要です。
※パートナーは泌尿器科への受診が必要ですが、事情によっては自費でパートナーへの処方が可能です。
※淋菌感染を重複することがあるので、淋菌検査を同時に行うこともあります。
※クラミジア感染症に限らず、性感染症の予防目的でコンドームの使用をおすすめします。
※自費治療の希望がある場合には受付へお申し出下さい。
費用
咽頭検査代 | 3,300円(税込) |
パートナーの薬代 | 3,300円(税込) |
トリコモナス膣炎
膣トリコモナス原虫(小さい虫です)が感染することによって起こる膣炎です。帯下(おりもの)の増加、臭い、痒みなどの症状が出ます。トリコモナス原虫は膣内だけでなく、尿道や膀胱にも感染して膀胱炎の症状が出ることもあります。
原因
性行為により感染する性行為感染症のひとつですが、性行為以外でも感染することがあるので感染経路不明なこともあります。
検査
帯下を顕微鏡で観察して動いている虫を確認したり、帯下を培養してトリコモナス原虫がいることを確認したりします。
治療
1回の治療期間はおおよそ10日間です。
抗菌薬の内服薬と膣錠を併用して(薬を飲んで、膣内にも薬を入れる)治療します。ただし、妊娠中は膣錠のみ使用します。
性行為で感染するため、パートナーも一緒に治療が必要です。
内服治療中は飲酒を控えて下さい。アルコールの作用が強まり、腹痛、嘔吐、身体が赤くなるなどの症状が出ることがあります。
治療終了後は、次回月経終了後に再検査をして、トリコモナス原虫が消失していることを確認します。月経のない方は、治療後2~3週間経ってから再検査をします。
※陰性を確認するまでは性交を控えて下さい。
※入浴は最後にするようにして、入浴後バスタオルの共有はしないで下さい。
外陰部ヘルペス
性交渉や類似行為により単純ヘルペスウイルス2型もしくは1型が陰部の皮膚や粘膜に感染することによっておこる性行為感染症です。
初感染
初感染から症状が出るまで、2~10日くらいの期間の後、陰部に小さい水疱(水ぶくれ)や潰瘍ができて、外陰部痛、排尿痛、痒み、鼠径部(足の付け根)リンパ節の腫脹や圧痛、時に高熱の症状が出ます。まれではありますが強い頭痛を伴い、ヘルペス髄膜炎や脳炎を発症することもあります。初感染ではこのように激しい症状を呈することが多いのですが、一方で感染に気付かないほどに症状が軽度の場合もあります。
再発
1度感染すると、ウイルスを完全に排除することはできません。体内に潜伏していて、免疫が低下したときなどに再発することがあります。
再発時にも水疱や浅い潰瘍ができますが、症状は軽く、症状消失までの期間も短くなります。
治療
抗ウイルス薬の内服により症状が消えることが多いです。症状の強さによっては抗ウイルス薬の点滴が必要な場合や、同成分の軟膏を併用することもあります。(軟膏は内服薬と同時に処方はできないので必要があれば別日に受診となります。)
再発を繰り返す場合には、再発予防のために毎日お薬を内服する予防的治療を行うことがあります。
※症状が出ていないときでもウイルス排泄の可能性があるので、性交時には感染予防のためにコンドームを使用しましょう。
※パートナーは症状がなければ、治療の必要はありません。症状出現時には泌尿器科を受診して下さい。
※症状がある時には、家庭内でのタオルの共有は避け、洗濯は分けて行って下さい。入浴は最後にし、使用後の椅子はしっかり洗って下さい。
淋菌感染症
淋菌感染症は性交渉による淋菌感染が原因で発症する性行為感染症です。
子宮頚管(子宮の入り口近く)への感染に始まり、子宮内膜や卵管卵巣の炎症が起こり、更に感染が進行するとお腹の中まで炎症が広がってしまいます。初期症状は帯下の増加、臭い程度、あるいは無症状のこともあります。その後、性交時出血、下腹部痛、感染が広まると腹部全体に激しい痛みを伴うことがあります。
炎症が放置されると不妊症や子宮外妊娠の原因となり得ますので、しっかり治療しましょう。子宮外妊娠の原因となり得ますので、妊娠検査薬で陽性のときには、その後1週間くらいで子宮内に妊娠しているか確認するため、受診して診察を受けてください。
診断
子宮頚管を専用スワブ(綿棒のようなもの)でこすって淋菌の有無を確認します。Oral sexによる咽頭感染のリスクがある場合には咽頭うがい液を採取して検査を行うことがありますが、当院での検査は自費です。症状があるようなら耳鼻科への受診をおすすめします。
治療
パートナーと一緒に治療することが大切です。パートナーには泌尿器科を受診してもらいましょう。
当院では治療として抗菌薬の点滴静注(点滴により血管内に薬剤を投与する)投与をします。
症状が強い場合には医師の指示で連日して投与が必要なことがあります。
また、クラミジアとの同時感染の場合には、点滴とは別に抗菌薬の内服が必要です。
治療後3週以上を経過後に治療後の再検査を行いますので、ご自身とパートナーの陰性を確認するまでは性交渉は控えて下さい。
再検査で陽性の場合は、再度治療が必要です。耐性菌(使用した抗菌薬に体制を持っていて薬が効かない)の可能性を考えて、薬の感受性検査をすることがあります。
※クラミジアを重複感染することがあるので、クラミジアの検査を同時に行うことがあります。
※淋菌感染症に限らず、性感染症の予防目的でコンドーム使用をおすすめします。
※自費診療の希望がある場合にはチェックして受付へお申し出下さい。